地球上で最初のP2Pレンディング Zopa誕生物語 後半

地球上で最初のP2Pレンディング Zopa誕生物語 後半

P2Pレンディングは銀行に取って代わる存在か?

――この市場の急成長は、いつか銀行からシェアを奪いとれることを意味するものでしょうか、それともまったく新しいマーケットプレースができたということでしょうか?

私はP2Pレンディングが銀行に取って代わるものだと思っています。我々が新たな金融の場を作り出しているとは思っていません。多くのシェアを獲得できているのは、我々のシステムがよりよい商品だからです。より簡潔に安く金融を行うということが根本的な考えですが、我々の顧客は安さだけを理由に私たちを選んでいるわけではありません。我々はMoneywiseやMoneyFactsといった、影響力のあるオンラインサイトから、顧客サービス賞を6年続けて受賞しています。これは我々が、金銭面で満足のいく融資だけでなく、よりよい顧客サービスを作り出す努力をしてきたからです。良い顧客サービスや融資の価値を追い求めて来たのはもちろんですが、たとえば、借りたローンを手数料なしでいつでも返せるといった、借り手にとっての利便性も大切です。我々はP2Pレンディングにおいて、借り手にとって魅力的な副産物を作り出したということです。これらは、銀行との差別化をはかるためのものでした。差別化というと、P2Pという言葉は新しく、また珍妙なものに聞こえたのも事実でしょう。

それから、PPI(支払い保障保険)に関して起こった銀行のスキャンダルがありましたね。そういった銀行の不正を見てもほとんどの人は、慣れている銀行に預金をし、また融資を受けるのが現実です。我々が自信を持って顧客サービスを提供しているにも関わらず、です。言い方を変えると、今融資を受けたい人はとりあえず銀行に行くのが現状で、我々はまだ、十分に信頼できる貸し手として認められるまでの道半ばにいるということです。我々のビジネスの認知度をあげることが、今のところの大きな課題と言えます。

Zopaの審査は銀行よりも慎重だった。

――Zopaのローンのデフォルト率は銀行のそれよりも低いのが特徴的ですね。それはソフトウェアや顧客分析、リスクマネジメントによるものでしょうか、それとも他の何かによるものでしょうか?

今となっては優れた顧客分析やリスクマネジメントによるものと言えますが、はじめは我々が銀行よりも慎重だったからだと思っています。ですから、我々の黎明期のデフォルトによる損失はゼロでした。まぁ低すぎるくらいですね。それは我々が契約するべきであった多くのビジネスすらも退けてしまったことを意味しますから。

我々は2008年の金融危機から銀行よりも良い業績をあげつづけていますが、貸し倒れも多少経験しています。良い事ですよ。効率的にリスクマネジメントができている限り、貸し倒れも悪いことではないんです。というのも、初めのころ我々はかなり保守的だったんですが、そこから多くを学べました。何かについて情報を得たいならは保守的な価値観から始めたほうがいいですね。リスクを取り除くことよりも、リスクを足していく考えかたのほうが明快です。我々が融資を断った顧客に関して遡及的分析ができますから、保守的な融資から学ぶことは多いんです。たとえば、この人には信用が足りないと考えて、我々は融資をしない決断をします。それでも他社から融資を受け、しっかりと返済する人もいるわけです。そういったデータを後から見返し、反映させることで融資の可否を決めるアルゴリズムをより正確なものにすることができますよね。言い方を変えると、我々は融資をするべきではなかった人から学ぶペイデイレンダーストラテジーと正反対の方向から信用モデルを構築していったのです。とてつもなく保守的に融資をしていた、と気づいたのは後になってからのことです。
我々に断られた後、他社から融資を受け、結果的に問題なく返済をした人々に対して融資をしていなかった訳ですが、そこから、「どうすればそういった人たちに最初から融資をできるだろう?」と考えるんです。時間のかかるプロセスです。我々はどんな人への融資を断っているのか、どんな人が結果的に問題なく返済をしたのか見つけ出そうとすれば、数年かかるわけです。もともと融資をしてから半年や一年程度でその人がどんな人なのかはわかりませんから。数年待つ必要がありますよね。
これとペイデイローン(次回もらう給料を担保に貸付を行う小口のローン)の信用モデルを比較してみましょうか。ペンデイレンダー(給料担保金融業者)は、見境なく融資を行います。彼ら自身のお金ですから、小口のローンとしてそれを貸し付け、超短期の返済期間を通じて借主について情報を得ます。ですが、我々の場合は、お金は我々のものではないですし、返済期間が長いので、こういった情報収集はできません。我々が融資するお金は誰かの出資者のお金ですからね。長い時間をかけても、より良い信用モデルを構築する必要があります。

――FISCOやExperian、Equifaxや、信用格付け機関を使ってリスク分析をする、ということはしなかったのでしょうか?

我々は彼らの格付けにあまり重きを置いていません。格付けは自身のデータがない人々にとっては有用ですし、大体は合っているものですが、我々自身のデータを持つことのほうが理想的だと感じています。そうは言っても、我々も信用調査機関から未処理のデータを買い、我々独自のデータと比べるために使っていますよ。経験の浅い貸し手は機関からの情報を鵜呑みにしがちです。機関のデータが信頼できないわけではありませんが、我々は別のレベルでそれを使用しています。いくつかの格付け機関からデータを買い取り、我々自身のデータと突き合わせるんです。そうすることでコストは多くかかりますが、融資をするにあたってずっと正確な情報を得られるということです。

増員せずに4倍の取引量を裁く。経営効率の良い組織こそがZopaの強み

――貸出量が倍増しているということは、スタッフの数も倍増しているということでしょうか?

スタッフの数はまた別なので、そんなことはありません。我々は会社の成長の度合いとは別に、段階を踏みながら社員の数を増やしてきました。初めのころは25人から40人程のスタッフと運営をしていましたが、増員せずに取引量は4倍ほどになりました。ですから、ビジネスの成長度合いとスタッフの増員は一貫しているわけではありません。スタッフの数はゆっくりと増えてきましたね。今年度、我々は100人程度までスタッフの増加を見込んでいて、これまでの10年間でスタッフの数が倍以上に増えたことになります。
現在我々は、現時点の3倍から4倍の契約量を見込んであるチームに投資をしていて、すでに昨年度比で2倍の契約を結んでいます。先を見据えて投資をしてきたということです。
その多くは、テクノロジーに関するものです。

――100人もの投資者が5億ポンドもの貸出金を持っていると思うと、銀行と比べても効率のよいものに聞こえますね?

その通りですし、これからも融資は増えていきますよ。また我々の運営コストは経験を重ねるごとに効率的なものになってきています。2015年は大体、5億5千万ポンドの資金を準備できると予想しています。取引の総額に関しては、大体6億ポンド程度になると思っています。2016年には10億ポンドほどの融資を見込んでいて、年末には大体13億ポンドほどを、準備できるようになるはずです。

――テクノロジーに関して、取引の情報は会社の内部で処理しているのでしょうか?それとも何か外部のソフトウェアや業者を利用しているのでしょうか?

特にハードウェアに関しては外部のサービスを使用し、ソフトウェアは独自に自社のものを開発していますから、その中間といったところです。特定の取引の処理に関しては、その時々でハードウェアに投資をしてきましたし、我々独自のシステムのアプリケーションを利用することもあります。まぁこの先変わっていくでしょうが、今のところはそうなっています。

――会社独自のシステムが必要なのはなぜでしょうか?

とても、いい質問ですね。確かに、会社独自のハードウェアだと、セキュリティー上の安全や、そのハードウェアが規制の対象になるのではと心配する人はいます。ですが、似たような業種でも利用される、クラウド上で活用できる優秀なソリューションがありますし、一般的に我々のような新しいビジネスが最初に規制の対象になることはありません。

P2P保険や、クラウドファンディングによる住宅ローンはなぜうまくいかないのか?

――興味深いことに、P2Pレンディングは順調に成長してきていますが、P2P保険や、クラウドファンディングによる住宅ローンはそううまくいっていないようです。このことについてどう見ているのでしょうか?

我々が行っている融資は、比較的短期で終わりますから、貸し手と借り手双方にとって便利です。こういった、現金からリターンを生みたい貸し手と、融資を受けたい人のマッチングは意外と簡単なものです。それと比べると、住宅ローンに関しては期間が長いですし、利率の変化という心配もありますから、難しいですよね。少なくともイギリスにおいては、25年間まで住宅ローンが組めます。アメリカだとそのくらいのローンに出資する人はいるかもしれませんが、イギリスの金融市場ではそうはいきませんね。出資者にとって複雑ですから。イギリスで長期のP2Pレンディングは絶対に成功しない、と言っているわけではないことを一応付け加えておきますが。
最近保険会社や機関投資家はモーゲージ証券を買い集めていますよね。そういった市場では、いくつもの仲介ビジネスを介しています。そうした仲介を省いて直接出資者と借主間で取引ができるようになると考えると、P2Pでの取引が増えるのはまったくありえないことではないでしょうね。私は、いずれ仲介ビジネスは省略されるようになると思いますし、我々のビジネスがそれを実現させるきっかけになるとさえ思っていますが、実現するには複雑な事情がからんできますね。というのも、無担保融資は全て契約に基づいて行われます。そこでは、証券や不動産の譲渡、法律に則った調査やデューデリジェンスは含んでいません。どれも問題になったときに全く解決できないものではありませんが、難しいんですよね。これが住宅ローンをより難しいものにさせている理由でもあります。
2種類の通貨を介する融資もまた、その瞬間にP2Pでお金をやり取りする必要がありますから、難しいものになります。通常の貸付のお金はもっと融通が利きますが、通貨間の取引はその瞬間に行われなければいけません。ドルをユーロに変換することはそう簡単なものではありませんが、ユーロを求めている人がいればそうせざるを得ません。ですが我々が管理する資金と、出資者が考えるそれの価値は必ずしも同じではありません。ドルを出資してくれているこの人は、ポンドで貸し付けたいと思っているかもしれません。通貨の価値は常に変わります。通貨の変換を含む取引は、瞬間的に借り手と貸し手をマッチングする必要があります。しかし我々の融資の場合、取引は何回かに分けて行うことができますから、瞬間的に行う必要はないんです
それから、私は保険について銀行よりもはるかに時代遅れのものだと思っていますから、じきになくなっていくと思っています。保険業界のテクノロジーは、銀行のそれと同じように粗悪なものだと言っても過言ではないでしょう。ですから、企業家が少しでも保険の分野で活躍し、現状の保険に関するリスクを周知させることで、いずれ業界は変わっていくと思っています。おそらく現在保険を買っている人たちは保険屋にぼったくられているとも、変化が必要だとも思っていないでしょう。保険はもともと透明性に欠けていてわかりづらいものですからね。たとえば銀行から4年間融資を受けようと思ったら基準は明らかですが、保険に加入する場合はそうではないでしょう。

――つまり、P2Pを使った保険業が少ないのは、信用の問題だと。自身に何か起こったときのための保障を買う際、それが確立されていないものであったら信用できないということでしょうか。

そうかもしれません。例えば融資を受けるときの信用の問題は、あなた自身がクレジットの評価を受け、それを閲覧することで明確になります。保険の世界においては違いますね。保証を買うわけです。目に見えないものですから、信用は曖昧なものですよね。

P2Pレンディングは銀行に飲み込まれてしまわないのか?

――最後の質問をさせていただきます。先日、ゴールドマンサックスが、この先5年間で、7パーセントの銀行の利益がP2Pレンディングやクラウド上の出資者へと流れていくと発表しました。銀行はこの発表を受けてP2Pレンディングをローンチしているようです。Zopaでも毎年シェアを倍増させているほどですし、銀行はみなこの潮流に乗り始めているのではないでしょうか?

ゴールドマンサックスも直接貸付を始めましたが、これはまったくP2Pレンディングとは違います。銀行と変わりません。彼らは言うなれば、「もっと効率的に融資を行える、P2Pレンディングから学べることがある」と言っていることに過ぎません。我々は資金を集め直接それを融資しますが、ゴールドマンサックスの試みは銀行の形態とそれほどかわりません。彼らが、我々よりも効率的に融資を行えるでしょうか?まぁ正確にはわかりません。それと、彼らの規制要求は銀行のそれと何ら変わりません。誰かの預金を貸し付けているわけですからね。

――単刀直入に言ってしまうと、銀行はいつかあなたがたZopaを締め上げたり、買収したりすることにはならないでしょうか?

そうかもしれないですし、そうであれば銀行は我々のシェアの分の利益をあきらめるしかないでしょうね。まぁ銀行ですと、我々を買収するよりも、マッキンゼーなどのコンサルタントからの助けを借りると思いますけどね。銀行のCFOは単純に、切れ者のコンサルタントから「どうお金をやりくりしているのか?」なんて事を、彼自身に教えてもらおうとするのが関の山だろうと私は思っています。実際にどこかの銀行がこの30年間で、消費者金融で収益をあげたなんて聞いたことがないでしょう?
彼らがこれまでやってきた金融のスタイルと、我々のような融資のスタイルが共存できるかどうか?これに関しては、私もわかりません。では、彼らはどれくらいの取引のシェアなら諦めがつくでしょうか?これはまた別の話です。銀行の役員と話せば、現行の銀行口座を維持させようと必死なようです。彼らは、その口座を通じてたくさん金融商品を売れば利益が出せると信じているんです。本当にそう思っているのなら、放っておくまでですけどね。

Giles氏について

自動車に関する興味から、自動車産業で10年間オープニングキャリアを積む。1992年には、Caverdaleを共同設立し、1997年には同社を2億5千万ポンドで売却。その後INSEAD(ビジネススクール)でMBAを取得した後、TescoやTesco Personal Financeを受け持つコンサルタントビジネスを設立する。2004年には、出資者と借り手を、銀行を介さずつなげるソーシャルレンディングサービス会社、Zopaを共同設立する。同社のCFOとして、ヨーロッパとアメリカの出資者の4つの団体から3千3百万ドルもの資金を調達した。2007年から2009年まで同社のUKマネージングディレクターを務め、銀行にとって脅威となるほど劇的にZopaを成長させた。

Zopaについて

イギリスのP2Pレンディングサービスの先駆者であり、世界初のP2Pレンダーである。2005年に最高経営責任者であるGiles氏と、以前のオンラインバンキング会社Eggのマネージメントチームとともに設立され、10億ポンドものP2Pレンディングを実現させている。51万人を超える人々が10ポンドから100万ポンドの範囲で貸し出しを行っていて、もっとも信頼されているローン供給者として、Moneywise Customer awardに6年連続で選出されている。

当記事は、2015年7月にスカイナー氏が、自身のブログにて発表したインタビュー記事を翻訳したものです。