ソーシャルレンディングは欧米をはじめとして盛り上がりましたが、昨今は中国そして日本におけるソーシャルレンディング市場も成長しております。しかしながら、一言でソーシャルレンディングと言っても、その国の事情によって成長要因は異なります。

実際に、欧米では個人間融資、中国では企業融資、日本では不動産融資を中心に市場が盛況してきております。

今回は日本を中心に、各国のソーシャルレンディング事情について概観いたします。

欧米の個人間融資からスタートし、世界に広がるソーシャルレンディング市場

欧米では、ソーシャルレンディングはインターネットを利用した個人間融資として語られることが多く、P2Pレンディング(peer to peer lending)と言われることもあります。

欧米では現在もこの個人間融資がソーシャルレンディング市場の中心を占めており、個人がソーシャルレンディングサイトを通じて、資金の貸し手にも借り手にもなることができます。

昨今では、市場拡大とともに、不動産ローンや自動車ローン等、様々なローン分野にもソーシャルレンディングが拡大してきています。

コンサルティング会社のPwCは、2014年の1年間に、米国におけるソーシャルレンディング(P2Pレンディング)を通じて投資された金額は5,500億円(1ドル100円とする)に達すると報告しています。また同社は、米国におけるソーシャルレンディングの市場規模は、2007年と比較して、四半期当たり84%で成長していると試算しています。

中国では法人向け融資を中心に爆発的に市場が拡大

中国のソーシャルレンディング事情

欧米の次にソーシャルレンディング市場が盛り上がったのは中国です。

個人間融資が中心の欧米に対して、中国では法人向け融資を中心として市場が伸長しています。

共産主義国家の中国では、銀行の融資は国家の厳しい規制の下で行われています。
しかしながら資本主義経済を取り入れ、経済が発展中の中国において、現行の銀行制度では中小企業の資金需要に応じることができていない状況となっています。

そのような状況下で、インターネットを通じ個人から資金調達が可能で、中小企業の資金需要に柔軟に応えられるソーシャルレンディングは、一躍中国国内で広まることとなりました。

しかしながら中国では、ソーシャルレンディング運営会社自体が玉石混交状態となっており、投資家の資金持ち逃げ事件も発生する等、市場急拡大一方でひずみも生じているというのが、中国のソーシャルレンディング市場の姿となっています。

日本におけるソーシャルレンディング、個人向けローン事業はmaneoが頓挫

実は、欧米同様、日本におけるソーシャルレンディング事業も、個人向けローン事業からはじまっています。
現在、日本のソーシャルレンディング業界で最大手のmaneo社(maneoマーケット株式会社)は2008年のソーシャルレンディングサービスの開始当初は、欧米のソーシャルレンディング事業をモデルに個人対個人のローン事業をスタートさせています。

しかしながら利用者数の低迷及び多数の返済延滞の発生を背景に、2011年に個人向けローン事業から撤退し、現在に至っています。

maneo社の個人向けローン事業が軌道に乗らなかった理由は多数考えられますが、市場環境として日本では既存の個人ローンのサービスインフラが欧米に比べると発達している、という点も挙げられます。

日本には消費者金融及びカードローンという既に個人が資金の借入をするためのインフラが整っています。
特にカードローンはカードさえ作ることができれば、非常にスムーズな資金の借入を行うことができます。よって、資金の借り手である個人は、ソーシャルレンディングを利用する必要性が欧米ほど強くなかったと考えられます。

不動産案件を中心に発展を遂げる日本のソーシャルレンディング市場

不動産案件を中心に発展を遂げる日本のソーシャルレンディング市場

maneo社は、個人向けローン事業では頓挫したものの、その後開始した事業性融資により軌道に乗り、現在の業界最大手ソーシャルレンディング事業者の地位を築くこととなります。

日本のソーシャルレンディング市場は、その融資対象を個人から法人に向けることで、成長していきます。特に不動産融資を中心として、日本のソーシャルレンディング市場は盛り上がっていきました。

不動産事業は売買をするにも開発を行うにせよ、多種多彩な資金が必要とされる世界です。
そんな中、バブル崩壊から2000年代初頭の金融危機、そしてリーマン・ショックを経て、不動産に融資することができる金融機関は激減してしまいました。

以前であれば不動産融資はノンバンクが中心として融資を実行していましたが、ほとんどノンバンクが銀行系列入りをしたり淘汰された結果、既存の金融機関のみでは不動産関係の資金需要を充分に賄うことができない状況となりました。

そのような中でソーシャルレンディング市場が日本においても立ち上がり、以前のノンバンクが担っていた役割の一部をソーシャルレンディングが代替する形で、日本のソーシャルレンディング市場が立ち上がりそして拡大してきたという面があります。

また、日本におけるソーシャルレンディングはリーマンショック後に立ち上がっており、景気回復期における旺盛な不動産需要期にも手伝って、ソーシャルレンディングの需要が高まっている背景も見逃すことができません。

上記のように、ノンバンクという以前の不動産金融のメインプレイヤーが不在の中、不動産市況の回復期がソーシャルレンディング市場立ち上がりのタイミングと合致することとなり、日本のソーシャルレンディング市場は不動産関係の融資を中心に成長してきたのではないでしょうか。

日本のソーシャルレンディングの市場規模

日本のソーシャルレンディングの市場規模について、矢野経済研究所が発表した資料があります。矢野経済研究所によると日本のクラウドファンディングの新規プロジェクト支援額(市場規模)は下記のように推移しています。

2012年度 7,161百万円
2013年度 12,429百万円
2014年度 21,610百万円
2015年度 36,334百万円
2016年度(見込) 47,787百万円

※なお、上記数字は購入型、寄付型、投資型(ファンド型)、貸付型(ソーシャルレンディング)のクラウドファンディング全体での市場規模となっています。

このうち、2015年度のクラウドファンディングにおける類型別構成比は、貸付型(ソーシャルレンディング)88.7%、購入型9.0%、投資型(ファンド型)1.9%、寄付型0.4%となっていることから、ソーシャルレンディング市場の大半はソーシャルレンディングが占めていると予想されます。

よって2015年度は約325億円、2016年度の見込は約430億円が日本のソーシャルレンディングの市場規模と推定することができます。
実際にクラウドポート調べでは、2016年度の市場規模は533億円まで成長しています。

しかし、前述のPwCによる2014年の米国ソーシャルレンディング市場は約5,500億円と報告されているので、日本のソーシャルレンディング市場は米国の市場規模と比べると10分の1にも満たない数字なのです。

日本のソーシャルレンディング運営会社は現状21社

日本のソーシャルレンディング運営会社について詳細を調べての資料等は公表されていないものの、日本では21社程度のソーシャルレンディング運営会社が活動していると言われています。

アメリカではレンディングクラブ(LendingClub Corporation)というソーシャルレンディング専業での上場会社も現れていますが、今後日本においてもソーシャルレンディング専業での上場会社の出現が期待されます。

各国の資金ニーズに合わせた成長を遂げるソーシャルレンディング

各国の資金ニーズに合わせた成長を遂げるソーシャルレンディング

欧米では個人間融資を中心に成長するソーシャルレンディングですが、中国では法人、日本では不動産というように、それぞれ異なる姿が見られます。

金融分野は国によって規制もニーズも異なります。例えば人口減少で新車販売台数の伸びない日本では自動車ローンの数字が伸びない一方、人口が増加しており新車販売台数の好調な米国では自動車ローンは今も伸び続けています。

ソーシャルレンディング市場も同様、各国のニーズに合わせて市場が成長していると捉えることができます。

まだまだ市場が拡大している世界のソーシャルレンディング市場ですが、今後も各国の資金ニーズに合わせた分野での成長を遂げるのではないでしょうか。

今後の展望

以上、ソーシャルレンディングについて世界の事情を振り返りました。

インターネットの普及により、これまで充分に資金が行き渡っていなかった分野へも、徐々に資金が流れるようになっています。
また、FinTechの流れの中で、これまで規制がありコスト高だった分野での借り入れも、ソーシャルレンディングを用いることで低コストで資金の借り入れができるようにもなりつつあります。

欧米及び中国ではソーシャルレンディング市場の拡大が続いており、日本においてもまだ市場の伸長が伺えます。

日本のソーシャルレンディング市場は米国と比べるとまだ10分の1の規模にしか過ぎない分、今後の日本のソーシャルレンディング市場の拡大余力も期待できるのではないでしょうか。

執筆者紹介

SocialNote

ブログ「ソーシャルレンディングの投資ノート」の管理人。個人事業主の傍ら、株・REIT・FX・先物等、これまで様々な投資を手がけてきた個人投資家。ソーシャルレンディング投資の面白さと将来性に着目し、ブログを開設しソーシャルレンディングについて分析やコラム等を執筆している。一般的なファンド運営業務も実務を通じ知っていることから、ファンド運営側と投資する側の、両方の視点でソーシャルレンディング業界を見守っている。