ソーシャルレンディング投資を行っていると目にする「繰上げ返済」や「早期償還」という言葉。

これらは返済遅延やデフォルトの発生なく、返済完了予定日よりも前に無事に元本が戻って来てくれるので、投資を始めたばかりの投資家にとってはホッとさせてくれる言葉かもしれません。

ただし、長期的に投資を継続することを考えると、早期償還のデメリットの面にも目を向けて投資を考える必要がありますので、どのようなメリット・デメリットがあるのかを整理します。

※なお厳密には異なるものもありますが、ここでは便宜上、繰上返済、早期償還、期日前返済や早期弁済などの言葉を、返済完了予定日よりも前に完済されるイベントのことを早期償還に統一して表します。

そもそも早期償還とは何か

ソーシャルレンディング投資に限らず、そもそも償還とは貸し付けた資金を返済してもらうことを指します。

またファンドの予定運用期間通りに返済されることを満期償還、それよりも前に返済されることを早期償還と呼びます。

ただし通常、満期前に一部の投資資金が返済されること(一部償還と呼ぶ)や、元本部分ではない分配金を受け取ることは早期償還とは呼びません。

早期償還はなぜ発生するのか

早期償還は、借り手にとっては借入金の返済期間が長いほど合計返済額が大きくなることから、早めに完済しようと努力することにより発生します。

例えば次のような場合が考えられます。

予定よりも早期にプロジェクトを完遂できた場合

マンション建築プロジェクトのために資金を借入し、そのマンションが完成した後に売却した際の資金から返済を行う場合を例とします。

債務者は、マンション工事を竣工した後、6ヶ月以内での完売を見込んでいたにもかかわらず、実際には3ヶ月で完売すると、債務者としては返済資金は手元にあるため、すぐに借入金の返済を行おうとします。

そうすると、ファンドの予定満期(この場合6ヶ月)よりも早く投資家に償還となる「早期償還」が発生します。

より低い金利の融資に借り換え出来た場合

次に、より条件の良い融資元を、債務者が見つけた場合、融資の借り換えにより、早期償還が行われます。

これを説明するために、投資家側としても身近な例として、住宅ローンの借り換えが挙げられます。

例えば、あなたが35年満期で金利3%の条件の住宅ローンを受けていたところ、10年目に他の金融機関で金利1%のローンを見つけたとしましょう。
すると、この場合、前者の住宅ローンよりも後者でのローンを受けた方が、あなたの借入金返済額が減ります。

もし、あなたが後者のローンに借り換えした場合、前者の住宅ローン提供者にとっては、35年満期だったものを10年で返済されるため、「早期償還」が発生することとなります。

この例と同様、もしソーシャルレンディングを通じて資金調達を行なっている債務者が、より良い金利条件などの資金借入元を見つけ、そちらに借り換えをした場合、投資家にとっては、「早期償還」が発生するのです。

早期償還にはどのようなデメリットがあるか

ここまで、ソーシャルレンディングで早期償還が発生する理由について解説しましたが、実際に早期償還が発生すると、何か投資家にとってデメリットはあるのでしょうか。
早期償還による考えられるデメリットは以下の通りです。

期待していた配当が得られない

例えば運用期間1年、予定利回り12%のファンドに10万円を投資して1万2,000円の配当を期待していた場合を考えます。

このファンドが6ヵ月で早期償還された場合、期待していた配当金の半分の6,000円しか得ることが出来ず、残りの6,000円を得られないことになります。

投資資金に遊ぶ期間ができる

ただ、早期償還された場合に1日の期間も開けず次のファンドに投資、運用開始できた場合は1つ目のデメリットを帳消しにすることも出来るかもしれません。

ところが実際には、あなたの投資が完了したら、すぐに運用開始できるというわけではございません。

まだ資金の募集中であるという場合もよくあり、投資して運用が開始されるまでにはソーシャルレンディング会社や投資先の都合により数日から数週間が空くことが通例です。

つまり、投資を実行しても、通常では空白の期間が発生することになります。

好条件のファンドが見つからない

また、昨今、ソーシャルレンディング投資の認知度が高まりつつあり、投資したいファンドを見つけてもすぐに満額締切になることが発生しているため、そもそも投資したいファンドへの投資ができないという状態になる可能性があります※1

このような状況下で早期償還が発生すると、自身の望ましい期待利回りや運用期間などの条件であるファンドを見つけるのが難しくなってしまい、好条件のファンドを見つけるまで資金を遊ばせるか、渋々条件の悪いファンドに投資せざるを得なくなってしまいます。

このように、早期償還は「期待していたほどの配当金が得られない」、「投資から運用までの空白の期間が空いてしまう」「そもそも好みの条件であるファンドが見つからない」などのデメリットが起こる可能性があります。

早期償還のデメリットへの対策

当然、早期償還は借り手側から発生するイベントのため、「期待していた配当が得られない」というデメリットは避けて通ることは出来ません。

ただ、他の2つについては考え方次第で多少の軽減を行うことが可能です。

まず「投資資金に遊ぶ期間ができる」デメリットは、予めある程度早期償還が発生することを計算に入れた上で、自己資金から投資資金に回す金額の比率をコントロールする方法で軽減することができます。

この方法は自己資金を全て投資資金に充当している場合は行うことが出来ませんが、多くの方は安全のために、ある程度は投資に回さない資金を残した上で投資を行っていると思います。

この場合、もし早期償還によって投資の10%が遊んでしまうと予め見込んでいる場合、投資に回す資金を10%増やしておくことでデメリットを軽減することが出来ます。

次に「好条件のファンドが見つかるとは限らない」点については、多くのサービスに予め口座を開設しておくこと、また新しいサービスは開始当初に高い利回りのファンドを募集する傾向にあるため、早めに口座を開設しておくことで軽減することが出来ます。

できる限り、様々な事業者のファンドを横断して検討できるような状態にしておくことで、自分の好ましい条件のファンドが見つかりやすくなるのです。

早期償還時にメリットもある

もちろん早期償還が行われると、期待していた利回りが得られないことや、投資資金が遊ぶ期間が発生するなどのデメリットもあります。

しかし、債務者は延滞やデフォルトを行わず、健全に借入金を返済できているという点では、投資成功と言えるのではないでしょうか。

返済不能や延滞になるファンドを選んでしまうよりは、早期償還という形だとしてもしっかり資金を配当付きで返済してもらえることが投資においては非常に重要なのです。

最後に、実は早期償還時に追加配当が貰えるサービスも存在することをご存じでしょうか。

予め募集要項に記載のある場合に限られるものの、不動産投資案件を行うオーナーズブックさんでは、早期償還が行われ不動産の売却価格が目標を上回っていた場合に追加配当が行われるファンドが募集されることがあります。

例えば過去には「墨田区マンション第1号ファンド第1回」で期待利回り5.0%のところ、最終利回りが9.4%までアップしたこともありました。

この仕組みは、早期償還のデメリット以上の利益を得られることがあり、かつ投資資金を早目に次の投資に回せますので投資家にとってメリットの多い仕組みとなっています。

まとめ

このように、ソーシャルレンディング投資の初心者にとって、「早期償還」は、投資金が配当付きで返ってくる、とても良いものとしての印象があるかもしれません。

しかし、「早期償還」には期待していたほどの配当が得られないことや投資金が遊ぶ期間が発生してしまうなどのデメリットもございます。
ソーシャルレンディング投資を行う際には、是非とも、早期償還ののメリット・デメリットを理解した上で、あなたに合う投資ポートフォリオを組むようにしてくださいませ。

執筆者紹介

まさお

ブログ「ソーシャルレンディングウォッチ」の管理人。 2015年からソーシャルレンディングを始め、自身のソーシャルレンディングの実績や独自の視点で解説したソーシャルレンディング業界コラムなどを執筆している。