こんにちは。ファイアフェレットです。

国内ソーシャルレンディングは盛況ですが、果たして今後も成長を続けていけるのでしょうか。
国内ソーシャルレンディング市場の盛り上がりを脅かすリスクとして「景気後退に対応できるのか?」という疑問が挙げられます。

今回は、実際に景気後退が起きたらどうなるのか、米国を例として考察してみました。

景気後退を経験していないと思われているソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングが投資商品として懸念される理由として「大きな景気後退を経験していない」というものがあります。

08年秋のリーマン・ショック後に台頭したため景気後退を経験していない。金融危機で貸出債権の悪化が進めばビジネスモデルを左右することになりかねない可能性もある。

参考サイト:http://newswitch.jp/p/5073

上記、日刊工業の記述は日本ではなく、海外ソーシャルレンディングに関する記述です。

通常、景気後退時には資金繰りに苦しんで倒産する企業は増えます。動産などの担保価値も下がるかもしれません。
したがって、景気後退時に、融資先の企業のデフォルトや担保による元本保証の懸念をするのはもっともです。

日本だけでなく、世界最後の景気後退時といえば、世界金融危機であった2007-2008年でしょう。しかし、ソーシャルレンディングが現在のような事業者融資を中心に取り扱うようになったのは世界金融危機後である2011年です。

たしかに日本のソーシャルレンディングは景気後退を「経験していない」といえばその通りです。

景気後退を海外ソーシャルレンディングは経験している

景気後退を海外ソーシャルレンディングは経験している

一方、海外のProsper(プロスパー)は2005年に、Lending Club(レンディングクラブ)は2006年に創業しています。
それではこれらのサービスが世界金融危機時にはどうしていたのでしょうか。

大抵のFinTech(フィンテック)を紹介する国内の本には次のようなことが書かれています。

世界金融危機後、従来の金融機関(銀行など)が規制強化のためサービスを縮小させ、それに台頭する形でFinTech金融サービスが拡大した。

この通り、金融危機後のFinTech、またソーシャルレンディングの躍進や台頭については言及されているものの、その世界金融危機時に海外のソーシャルレンディングがどうしていたのかについてはあまり言及されておりません。

恐竜が滅びた時の哺乳類のように、銀行の影に隠れてほそぼそと営業したのでしょうか?

景気停滞時にソーシャルレンディング事業者がどのように行動していたのかが明確になっていないからこそ、ソーシャルレンディングの景気後退時の不安が根強く残っているのではないでしょうか。上記の日経工業新聞の記述はそれを示しているといえるでしょう。

しかし、海外ソーシャルレンディング事業者の創業は世界金融危機の前であるため、海外ソーシャルレンディング市場は景気後退を「経験している」といえるでしょう。

それではいかに海外ソーシャルレンディング事業者は金融危機を乗り切ったのでしょうか。それについて触れた本を見つけることができました。

「FinTech2.0」から読み取れる、世界金融時の米国ソーシャルレンディングの動向

世界金融危機時のそれを記した貴重な記述がFinTech2.0(楠真氏著)の中にあります。同書にはアメリカでソーシャルレンディングが広まったきっかけについても、興味深い記述があります。

以下に概要を記します※1

  • ソーシャルレンディングがアメリカで広まったきっかけはセカンドライフのような、仮想世界のブームからと推察される
  • サービス開始時に業界をリードしていたProsperはアバター、ユーザーグループによるコミュニケーションを提供しており、それを通じてリアルな融資が行われた。従来のクレジットスコアによる融資を受ける人の制限などは採用していなかった
  • 海外ソーシャルレンディングサービスの実態は貸出債権(有価証券)の販売である、そのため米国証券取引委員会(SEC)は、2008年に業者に証券業として登録することを求めた
  • 当時米国の金融業界は金融危機に苦しんであり、サブプライムローン問題はソーシャルレンディングにも大きな影響をもたらした
  • 当時最大手だったProsperの貸し倒れ率は2006年~2007年かけ30%前後に達し、貸し手に大きな打撃を与え、サービス利用者は激減した
  • 一方Lending Clubではクレジットスコアを640点以上に限定し、サブプライム層を除外したため比較的影響が少なかった(このことはProsperも追随)
  • 証券業への登録準備のあいだProsperは営業を停止したが、Lendig Clubは自己資金を融資に充てて営業を続けたため、トップポジションはProsperからLending Clubに交代した。

※準備期間中は投資家からの資金募集ができなかったと思われる

Prosperはネット上の仮想現実社会の延長として理想のサービスを追求しようとしたものの、結果的にはクレジットスコアに重きをおいたLending Clubのビジネスモデルが優れていることを印象付ける結果となった。またSECの規制を受けることが明確となったことも大きな変化であった。

と楠真氏は総括しています。

景気後退時でもしっかり融資先の審査を行えるところは強い

景気後退時でもしっかり融資先の審査を行えるところは強い

Lending Clubの例は、たとえ景気後退時でもしっかりと融資先の審査を行って、投資家に損をさせなければ、ソーシャルレンディングは景気後退を乗り切れる、また業界トップの奪還というチャンスがあることを示すものです。

Lending Clubが業界トップの座を奪ったのには、当時業界トップだったProsperが営業を停止しても、自己資金を融資に回して営業を続けたLending Clubのガッツ、タフさ、攻めの態度も大きい要因でしょう。

トップを奪還されたProsperですが、現在でも堅調に営業を続けています。※2
 
上記のように、従来型金融機関が規制によりサービスを縮小させ、FinTech業界に追い風となったことによりソーシャルレンディングサービスは世界全体で勢いを増しています。

次にやって来る景気後退は時期も規模も全くの未知数であり、もちろん世界金融危機時のようにソーシャルレンディング業界に都合よく物事が流れるとは限りません。

しかし「ソーシャルレンディングは景気後退時を経験していないからダメだ」とは、言い切ることができないことを、米国ソーシャルレンディングの例は示しているといえるでしょう。

1)FinTech2.0-仮想現実社会の中で生まれたソーシャルレンディング(131-134P)から
2)アメリカで最初のP2Pレンディングサービス Prosperとはから

執筆者紹介

ファイアフェレット

ソーシャルレンディング投資を始めて5年。ソーシャルレンディング業界では知らない人がいないカリスマ投資家。投資家として参加しながらも、観察者として業界の成長を温かく見守る。ソーシャルレンディングについて書いたり、話したりすることを好み、自身で運営管理しているブログ「ソーシャルレンディング赤裸々日記」は業界関係者必読のブログ。自身の投資履歴も赤裸々に公開中。 「ソーシャルレンディング赤裸々日記」