2017年3月30日、ソーシャルレンディング事業を運営するみんなのクレジット社が金融庁より一ヶ月の業務停止および業務改善命令を受けた。

複数の不動産事業会社等に対し貸付けを予定しているかのような表示をしながら、実態として、そのほとんどが親会社もしくはグループ会社に貸し付けられていた。また、業務運営について投資者保護上問題が認められる状況があったとの記載があり、管理態勢について問題があるとの指摘をされた。

詳しくはこちらの記事に譲るが、顧客から大切な資金を預かる金融商品取引業社である以上、ベンチャー企業だからという甘えは許されない。みんなのクレジット社は、直ちに業務管理態勢を見直し、企業体質含めた抜本的な意識改革、体制整備を行っていく必要がある。

一方で、今回の問題を一企業の問題として片付けてしまっては、事の本質を掴めず、また同じ事象が繰り返される懸念がある。

今回の問題の背景、特に勧告内容の「(1)金融商品取引契約の締結又は勧誘において重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為(http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20170324-1.htm)」については、ソーシャルレンディングの法規制が深く関係していると筆者は考える。

現在、ソーシャルレンディングを包括する法規制は存在せず、金融商品取引法(以下、金商法)と貸金業法という2つの法律に跨ってサービスが運営されている。金商法は投資家保護の観点から、貸金業法は債務者保護の観点から事業者を規制をする法律だ。

現在は貸金業側の要請が優先されており、ソーシャルレンディング事業者は融資先の情報を匿名化且つ複数化してファンドの募集勧誘を行っている。「ファンドの融資先情報が開示された状態で1対1の投資ができるようになっていると、実質的に投資家が貸金業をやっているのと同義であり、投資家が貸金業登録する必要が生じてくる」というのが当局側の見解だ。

この融資先匿名化については兼ねてより業界内で広く議論がなされてきた。どの程度まで融資先情報を開示して良いのかという点について管轄する規制当局でも見解の相違があり、一部の事業者からは、その対応に苦慮しているという声も聞かれる。
今回のみんなのクレジット社の件においても、「匿名化を追求したあまり同一の融資先であるにも関わらず、複数の事業者に分散融資したような見え方になってしまった」と担当者は述べている(https://www.crowdport.jp/news/2220/)。

融資先を匿名化、複数化しなければ個人が無免許で貸金業と同様な行為ができてしまうという当局側の懸念は理解できるものの、”融資型のファンド募集を行う際に、出資者に融資先情報を公開してはいけない”という法律上の決まりがあるわけではない。

また、匿名化を推進することで、逆にそれを悪用する事業者の参入を促すことにつながる可能性も否定できない。何より、現在の形は、自分の資金がどのように使われているか知りたいという投資家側への配慮が抜け落ちているように思える。

実は現在、多くのソーシャルレンディング事業者の代表者が融資先は開示した方が良いという見解を自身のブログやセミナーなどで示している。借り手である中小企業側についても、それで継続的に資金が集まるのであれば、情報開示しても構わないという企業は多いそうだ。

制度を悪用されやすい金融サービスであるからこそ、あらゆる可能性を考慮に入れた慎重な制度設計とその厳格な運用はもちろん重要だ。その一方で、硬直的にならず実態に即した形に制度を進化させていくことも業界の健全な発展には必要なことではないだろうか。すべての懸念を払拭するような解決策を見出すことは難しいかもしれないが、より現状に合った適切な制度設計を目指して、事業者、投資家、規制当局、業界団体が一体となって議論を深めていく必要がある。

既存金融機関だけでは応えることが難しい多様な資金需要に対して、新たな選択肢を提供するソーシャルレンディング。昨今の盛況ぶりを見るに、投資家側、資金需要者側の双方にニーズがあることに疑いはない。一方で発展途上であることも確かだ。今回の件をきっかけに、より活発な議論が交わされ、ソーシャルレンディングがより健全な発展を遂げる事を切に願っている。

執筆者紹介

藤田 雄一郎