P2Pレンディング(P2P融資)は近い将来金融業界にパラダイムシフトを引き起こす

P2Pレンディング(P2P融資)は近い将来金融業界にパラダイムシフトを引き起こす

この文章は2015年2月に大手コンサルティング会社であるプライスウォーターハウスクーパース社が発表したレポート”Peer pressure -How to peer-to-peer lending platforms are transforming the consumer lending industry-を和訳したものです。

成長するP2Pレンディング

いくつかの情報をオンラインでさっと提出し、ほんの数時間のうちに融資を得られたらどんな便利か想像してみてほしい。

借手と借主を、銀行を介さずマッチングすることで、様々な会社がこれを現実のものにしてきた。
この、いわゆるピアツーピア(P2P)と呼ばれる市場ベースの融資モデルは、その低い金利、簡略化された融資プロセス、スピーディーな融資の決定で人気を呼び、人々から支持を得ている。

そしてこの融資モデルは、住宅ローンや、他の担保付ローンにまで拡大してきている。P2Pプラットフォームは、人々によりよい融資を提供することで、ニッチ市場を掘り出し、そして急速に勢いをつけているようだ。
未だ市場として成熟しているわけではないが、アメリカのP2Pプラットフォームは2014年に55億ドルもの融資を成立させている。

銀行業界は、この新進気鋭の競争相手を無視できなくなってきている。
P2Pレンディングの住宅ローンや他の資産クラスへ進出しているという事実は、P2P金融はすでに個人が小さなローンを得る場所ではなく、銀行の既存の顧客ベースを脅かす存在になりつつあることを意味している。

オンラインベースで、低コストで運営されるP2Pプラットフォームは借り手に魅力的な金利を提示する。

連邦銀行(FRB: Federal Reserve Bank)によると、P2P金利はほとんどの場合、クレジットカードの金利よりも安い。
金利の安さと、融資の仕組みが借り手にとって便利で、効率的なこと、そして同時に投資の機会を生み出すことから、投資家にとってもP2Pは有用なものになりつつある。

P2Pレンディングの仕組み

P2Pのビジネスモデルは、伝統的な銀行の仕組みとはまったく違うものだ。P2Pレンディングのサービスを提供する会社は、彼らの資金を貸し出すわけではない。
彼らは、融資を探す借主と、投資家からの出資をマッチングするのだ。

P2Pプラットフォームにおける利益は、借り手に対する取り組み手数料、貸し手に対するサービス料や延滞料、回収手数料から生み出されている。貸し手、つまり投資家は借り手が支払う利息から利益を得る。
借り手にとっての利益は、効率の良い融資のプロセス、すばやい融資の決断、そして24時間いつでも彼らの融資がどうなっているかオンラインで確認できることだ。

2025年には取引量は1兆ドルにも達するとの予想も

アメリカでのP2Pレンディングの取引量は、2007年から4半期ごとに平均で84%の成長を続けている。
こうして急速な成長を見せているにもかかわらず、現在の取引量は今後期待される見込みのごく一部過ぎない。

FRBによると、P2Pプラットフォームは次なる成長をする準備ができているという。
P2Pにおける投資家たちが主潮となり、他の資産クラスにP2Pレンディングが拡大していくにつれて、新たなマーケットを切り開いていく可能性も増えていく。

P2P市場の長期的な成長に関する予測はかなり開きがある。
あるベンチャーキャピタルは、2025年には取引量は1兆ドルにも達すると予想している。

PwCの市場予測にいたっては、保守的な予測でさえかなりの成長を見込んでいる。
PwCはP2Pレンディングが2025年までに150億ドルの市場を得るという予測をしている。
これは、たとえP2P市場の成長率が落ち込んでも達成されるもので、他の資産クラスを考慮に入れずとも達成される可能性がある。

P2Pレンディング市場は、アメリカに8000億ドルあるリボルビングローンの10%と、1.4兆ドルある金融機関への借金の5%を獲得することで、150億ドルの市場を得ることができる。
これらは大変な量の取引に見えるが、現在のP2P市場の爆発的な成長を考えると非現実的なものではない。
証券監督者国際機構(IOSCO: International Organization of Securities Commissions)は、世界的なP2P取り組み手数料は、この5年以内に700億ドルを超える可能性があると予想している。

協力か競争か

「伝統的な金融機関はP2Pと協力するか、競争をする必要がある」

協力をするのであれば、金融機関は出資者としてローンを買ったり、同盟を組んだりすることができるだろう。
競争をするのなら、直接P2Pプラットフォームと対峙するか、あるいはP2Pから模倣をし、同じ顧客を奪い合う必要があるだろう。

あなたのビジネスがどちらの道を選ぶかは、企業戦略によるだろう。
そしてその選択は、ビジネスの将来の成長に大きな影響を与えることになる。

金融機関はP2Pレンディングに関する戦略的意思決定をし始めている。例を挙げてみよう。

ローンの購入
銀行や機関投資家はP2Pローンを購入しポートフォリオに組み込んでいる。

同盟を組む
P2Pプラットフォームは伝統的な銀行と同盟を組み始めている

  • 資金の調達
  • 顧客を紹介する
  • 企業と顧客の両方に向け信用商品をつくる

P2Pレンディングは何が違うのか?

P2Pレンディングの大部分は、個人や、機関投資家が個人に対して出資するオンラインビジネスである。
P2Pプラットフォームはローンを貸し出さないが、借り手と貸し手のマッチングをする。

P2Pプラットフォームは信用モデルの審査や、借主を査定するシステムの開発を進めてきた。
より多くのデータを分析することで、伝統的な信用スコアを超えた基準でより広い顧客を得ることができるためだ。

リスクベースの価格設定、投資家のリターンとポートフォリオの多様化への要求が、信用度の低い借り手に対しても出資をするモチベーションとなっている。

投資家は、1人の借り手に100%の資本をつぎ込むこともできるし、それを分散して複数の出資を行うこともできる。
ほとんどのP2Pプラットフォームは、幅広い出資の形に対応するために、そのどちらの出資も受け入れている。
その他にも、P2Pプラットフォームでは自動でローンを選び、自動で出資を行うこともできる。

投資家は事前にどんなローンに出資をしたいかを設定しておくと、自動でフィルターをかけ、条件にあったローンに出資することができるのだ。
P2Pレンディングには多くの種類があるため、投資家は幅広いローンの形を選ぶことができる。
たとえば、家電製品を買うためのローンであったり、企業を行うためのローンを選んだりすることもできるのだ。

シンプルな融資プロセスの体験

おそらく、P2Pがもたらす大きな違いのひとつは、オンラインインターフェースとそのプラットフォームが可能にする融資の体験だろう。
P2Pレンディングのプロセスはシンプルで非常にスムーズなものだ。
利率を確かめようと思ったら、基本的な情報を打ち込めばインターネット上で1分もあれば確認できてしまう。

また、ほとんどのプロセスがオンラインでできるため、借り手は融資について更新があればすぐにその情報を得ることができる。
P2Pプラットフォームから融資を受ける承認を受けた後であれば、いつでもどれくらいの割合の出資を受けられているか確認することができるのだ。

ほとんどのP2Pプラットフォームは、借り手のためにウェブサイト上でカスタマーサポートのためのチャットルームやEメールの更新をしている。
また同様に、投資家のために、ポートフォリオをマネジメントするためのツールを提供している。

Figure 1では、一般的なP2Pレンディングノプロセスがどのように進んでいくのかを示している。
(※下記は、アメリカのP2Pレンディングプラットフォームのプロセスです。国内のソーシャルレンディング事業者の投資プロセスとは異なります。)

Figure 1 
【1日目 】

  • 利率チェック:クリックで始まり、クリックで終わる簡単なオンライン上での作業
  • ローンに関する情報:利率決定において参照される最低限の個人情報を登録する
  • ローンを選択する:融資の種類を選択。ウェブ上でサイン。その他の融資のオプションの表示。
  • 最終確認:Eメールが送信され、融資の次のステップへ

【2日目以降】
この時点で銀行の口座とEメールの確認が済んでいる。

  • ローンの公開:あなたのローンが投資家に公表される。融資が確定した段階で、逐次ステータスが更新される。
  • 融資の完了:目標の融資額に到達すると、あなたに通知が届く。
  • お金が振り込まれる:自動的に登録した口座に融資が振り込まれる。

消費者金融におけるパラダイムシフト

消費者金融業界は、いまだP2Pレンディングがもたらす影響のすべてについて把握しきれていない。
急速に成長してきてはいるが、P2Pレンディングはいまだに新しいものであるからだ。

しかし、技術革新と、人々の両方の変化によって、P2Pレンディングは近い将来金融業界においてパラダイムシフトを引き起こすことは目に見えている。
先進国が高齢化社会を迎え、人々は伝統的な銀行預金を超えるリターンを生み出してくれる投資先を探し始めている。

それと同時に、若者たちが人生の節目に大きな買い物をしたり、学生ローンの返済のためにP2Pレンディングを利用したりするため、この市場における割合を増やし始めている。

こういった若者世代は、銀行に対する信仰心が薄い上、オンラインの利便性についてよく知っているため、P2Pレンディングの非常に重要なターゲットなのだ。

このように多様なローンのカテゴリをもち、独特な査定の基準を擁し、確固とした市場を築き始めているP2Pプラットフォームは今後、隙間産業から、業界の主流へと変わっていく可能性を秘めている。

考えられるリスク

金融を取り巻く人々の変化や新たな技術は大きな可能性を示すものだが、それらは同時に、既存の銀行との競争や、規制当局からの厳しいチェックにさらされるといったリスクも含んでいることを頭に入れておこう。

規制に関して

証券取引委員会(SEC)は2013年の10月にクラウドファンディングの規制について提案したが、最終的に決定されたものではない。
この提案は、登録手続きや、投資家と借り手の保護、広告規制、財務報告やディスクロージャーに関する要件を明らかにしたものだ。

2014年の3月には、イギリスの金融行動監視機関(FCA: Financial Conduct Authority)がクラウドファンディングに対する規制について公表している。
この、FCAが公表したものは、アメリカにおけるP2Pレンディングの規制が今後拡大していく上での道しるべとなるものであろうと考えられる。