借り手の匿名化がついに解除。その影響と今後確認するポイント

借り手の匿名化がついに解除。その影響と今後確認するポイント

こんにちは。中田健介です。

これまで、すべてのソーシャルレンディング事業者において借り手の名称は原則として非公開とされてきましたが、2019年3月18日、金融庁よりソーシャルレンディングの匿名化解除に関する公式見解が公表され、原則として借り手の匿名化は不要となりました。
これにより、どういった影響があるのでしょうか。

借り手が匿名化されてきた経緯

日本でソーシャルレンディングサービスが開始されたのは2008年ですが、当時はmaneoなどで借り手の企業名を公開してファンドの募集がされていました。

金融当局により、ソーシャルレンディング事業者に対して「借り手を匿名化するように」との指導がされるようになったのは2014年ころです。そのため、いずれのソーシャルレンディング事業者でも原則として、借り手の企業名は非公開となりました。

金融当局がそうした指導を行うようになった理由は、借り手の社名などを公開して資金を募集することは、実質的に投資家が借り手の企業に貸金業を行なっている状態であると見なされ、貸金業法に違反する可能性があったためなどとされています。

しかし、その後いくつかのソーシャルレンディング事業者で、匿名化を悪用し、投資家に知らせずに関連会社に融資したり、実際の資金使途と異なる表示をして資金を集めたりといったケースが発生してしまいました。
こうした事態を踏まえて、2018年の政府の規制改革推進会議では、借り手の匿名化はソーシャルレンディング事業の実態にそぐわないもので、投資家保護が阻害される事態になっていると問題点が指摘されました。※1

こうした議論を踏まえて、ついに金融庁より「原則として借り手の匿名化は不要」との公式見解が公表されました。

この公式見解を受け、ソーシャルレンディング事業者各社で借り手名称を公表する動きが出てきています。

匿名化解除による影響

この借り手の匿名化解除により、どのような影響があるのでしょうか。
各関係者ごとの観点から考えてみたいと思います。

投資家にとっての影響

借り手の企業の情報が公開されれば、投資家はそれに基づいて投資判断ができるようになります。社名、業務内容、財務情報、経営者の経歴といった情報は投資先の安全性を見極める上で役に立つでしょう。

借り手の社名がわかれば、募集ページにそれらの情報が載っていなかったとしても、必要に応じてインターネットなどから追加で情報収集することもできます。

また、担保付きの案件の場合、担保についての詳細も開示されれば、その価値の妥当性を判断することもできます。不動産担保であれば、その住所や広さ、築年数といった情報が開示されると考えられます。

先にも述べたように、過去にはいくつかのソーシャルレンディング事業者で、借り手が実は事業者の関連会社であったが募集時にはその旨が全く投資家に知らされておらず、後で問題になったケースがありました。借り手の社名が明らかになれば、こうした問題も起こらないでしょう。

匿名化解除により、事業者と借り手の企業に関係があるかどうかも明らかとなるので、より分散投資がしやすくなります。

いずれの点からも、より安心して投資できるようになるということは間違いありません。

事業者にとっての影響

匿名化が解除されれば、ソーシャルレンディング事業者としては、問題のある借り手に融資したり、関連会社であることを隠して募集するといったことはできなくなり、そういったことをしない健全な事業者のみが残ることになるでしょう。

一方、元々借り手審査を厳格に行なっていた事業者にとっては、借り手情報を公開できるということはむしろプラスになると考えられます。借り手の企業の財務情報や担保の詳細などを公開することで信用を得られれば、投資家から資金を募集する上で有利になるでしょう。
また、例えば借り手の企業の代表者からの動画メッセージを公開するなど、情報の見せ方を工夫することで、より投資家にアピールすることもできるようになると考えられます。

業界全体としての影響

これまで、ソーシャルレンディングというサービス自体にどこか「怪しい」「うさんくさい」というイメージが持たれていたことは事実でしょう。その一因は、借り手が非公開であるという点にあったのではないでしょうか。

匿名化が解除されれば、大幅に業界全体の透明性が高まり、イメージが向上すると思われます。新規にソーシャルレンディング投資に参入する投資家が増え、一層の規模の拡大につながることでしょう。

借り手情報を確認するポイント

借り手情報が公開されるようになれば、個人的に以下の観点で借り手情報を確認したいと考えています。

借り手情報がより詳細に公開されているソーシャルレンディング事業者を選択する

現時点では、借り手情報をどこまで公開すべきかについては特に具体的な指針は示されておらず、ソーシャルレンディング事業者間で情報をどこまで公開するかはバラつきが出るものと考えられます。

個人的には、より積極的に借り手情報を公開するソーシャルレンディング事業者を選択したいと考えています。意図的であるかどうかに関わらず、借り手情報をあまり公開しないということは何かしら後ろ暗い点があるのではないかという疑いが捨てきれないためです。

同様に考える投資家は多いと思われるので、今後は、借り手情報公開をより積極的に進めるソーシャルレンディング事業者が投資家の信用を集めることとなるのではないでしょうか。

借り手がソーシャルレンディング事業者と何らかの関連がないかチェックする

過去には、借り手がソーシャルレンディング事業者の関連会社であったり、親会社・子会社であったにも関わらず、その事実が公開されずに資金が募集されたケースもありました。
今後は、借り手がソーシャルレンディング事業者と何らかの関係がないか、投資する前に必ずチェックするつもりです。

関係があること自体が必ずしも悪いわけではありませんが、関係があった場合は、分散投資の観点から、そのソーシャルレンディング事業者への投資額は一定の範囲内にとどめる予定です。

借り手の財務状況・信用情報を確認する

借り手の財務諸表や信用情報などがネットなどから確認できる場合は、それらの情報をチェックしたいと考えています。決算書から、自己資本比率・負債比率など、会社の安全性に関する指標を算出し、返済に関して不安がないかを確認します。

また、過去に返済遅延やデフォルトなどを起こしていないかといった信用情報もできる限り確認します。

資金使途が妥当かを確認する

資金使途が、会社の事業内容および規模から妥当であるかどうかを確認します。
本業とは全く関係のない資金使途であったり、会社の規模から考えて大きすぎる金額の新規投資である場合は、投資は避けたほうがよいと考えています。

代表者・役員の経歴を確認する

借り手企業の代表者や役員などの氏名をネットなどで調べ、過去に問題のある行動に関わっていたり、悪いうわさなどがないかを確認します。

うわさについては事実確認が難しいのですが、あまりに悪いうわさの多い人物が関わっている場合、その企業への投資は慎重に考える必要があるでしょう。

終わりに

匿名化解除は、いわばソーシャルレンディング関係者にとっての「悲願」でした。

これまでにいくつかの事業者で起きてしまった問題も、匿名化の指導がなければあるいは起こらなかったかもしれません。
一人の投資家として、匿名化解除の実現を歓迎したいと思います。


※1:クラウドファンディングに係る規制改革要望 2018年2月27日

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