世界最大規模?中国のソーシャルレンディング最新事情や市場規模

世界最大規模?中国のソーシャルレンディング最新事情や市場規模

中国のソーシャルレンディング市場規模は世界一?!

中国のインターネットサービスは、日本以上に独自の進化を遂げています。ソーシャルレンディングもその例外ではありません。中国ネット金融の光と影を特集したNHKのクローズアップ現代(2016/6/1放映http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3814/)をご覧になった方も居るのではないでしょうか。

ここでは、国際的な会計士の団体であるACCAの調査レポートを元に、中国のソーシャルレンディング事情をみていきます。

まず、2015年末における中国のソーシャルレンディング市場規模は、様々な見方があるものの約2兆円から4兆円(1ドル100円換算。以下同様)ではないかと予想されています。背景としては、投資意欲が旺盛な中国国内の個人投資家が多いことと、国の経済成長や生活水準の向上に伴い、個人や個人事業主の資金需要が多いことがあげられます。

市場規模としては米国の5.5兆円にせまる規模で、特に欧米のソーシャルレンディングは資金の出し手としてヘッジファンド等の金融機関が増えてきていることを考えれば、ピア・ツー・ピア(P2P)市場としては世界一の市場である可能性があります。

平均利回りは12−18%

ACCAが実施した、ソーシャルレンディングの投資家へのアンケート結果によると、6割近い投資家が12−18%の利回りの商品への投資が多いと回答しました。

さらに、投資する際の評価基準としては、借り手の信用スコア、ソーシャルレンディングプラットフォームPaiPaiDai(拍拍贷)の保証が付いているかどうか、利回り、借り手の身元証明、の4つを重要視するという投資家が多いようです。

2015年の政府の通達の影響

中国政府は、それまで野放図に拡大していたインターネット金融(ソーシャルレンディングにかぎらず)に対して、2015年6月にインターネット金融に関する通達を出し、これがソーシャルレンディングやクラウドファンディングの健全な成長のきっかけになったといわれています。

この通達には、投資家から預かった資金を、政府が指定した金融機関の口座において保全する義務を定めており、これにより、主に中小規模のソーシャルレンディングプラットフォームはより大きな事業者へと集約されていく流れが生じました。

最王手PaiPaiDai(拍拍贷)が切り開いた市場

現在中国のソーシャルレンディングプラットフォーム事業者はPaiPaiDai(拍拍贷)がナンバーワンです。
PaiPaiDai(拍拍贷)は2007年に中国初のソーシャルレンディング事業者としてスタートしました。その後2011年までに約50の事業者が参入し、さらに2014年末までには事業者の数なんと1500社に達するほど新規参入が相次ぎました。

PaiPaiDai(拍拍贷)は2015年半ばまでに120万人のアクティブユーザーを数え、そのうち約60万人は個人の借り手となっています。

中国では、大多数の人が低所得で借り入れの金額も小さいため、既存の金融機関では借りることが出来ないという事情が、このようなインターネットを介したソーシャルレンディングの爆発を生みました。

日本ではサラ金と呼ばれるノンバンクが、欧米ではクレジットのリボ払いやキャッシングがそれぞれ消費者向け少額融資を提供していますが、中国ではそのような金融サービスが未発達だったため、その隙間をソーシャルレンディングが埋めたと考えられます。

事業者向けローン比率も20−40%と比較的高い

英国の経済学者による分析により、中国のソーシャルレンディングにおける事業者向けローンの比率は20−40%と、英国やその他欧州のソーシャルレンディング市場に比べて多いと報告されています。この背景として、中国の金融機関が顧客としている企業群から、中小企業が漏れているという事情が考えられます。

中国は、1980年代の改革開放路線のタイミングより、政府が支援する大規模金融機関が中国の金融を独占するようになります。

これら政府系金融機関は、国営企業や国の後ろ盾のある重要産業に積極的に融資を行う一方、中小零細企業や個人事業主に対してはほとんどサービス提供してきませんでした。この結果、中小零細企業は自己資金や、親類縁者を中心とした縁故融資により資金を調達し、事業を伸ばしてくようになりました。

このような金融慣習は、最近の政策によっても大きく変わることなく現在に至っているといえます。

この結果、インターネットが普及するとともに、インターネットを通じた貸し手と借りてのマッチングが普及し、ソーシャルレンディングの拡大につながっていきます。最王手のPaiPaiDai(拍拍贷)はじめ、大手ソーシャルレンディング事業者であるDianrongやJimuboxも、創業時からしばらくはこうした中小零細企業向けローンを専業としていました。

消費者の借入額は約5万円。利回りは8−12%が最多

その後、大手ソーシャルレンディング事業者は、インターネットを利用する消費者が急速に増える中、インターネットを通じた消費者向けローンを展開してゆき、現在では消費者向けローンが事業者向けローンを上回っている状況です。

ACCAのアンケート結果によると、約半数の利用者が1回あたり4−6万円を借りると回答。その時の利子は8−12%につづき12−18%が過半数を占めました。また、9割以上の利用者は借入期間が1年以下だったと回答しており、最も多いのは3−6ヶ月とのことです。

消費者がソーシャルレンディングで借りる理由とは

ACCAの調査によると、51%の借り手がソーシャルレンディングを利用する理由として、「返済実績を積み重ねるため」と回答しています。このような消費者は、将来に大きな借り入れをすることに備え、大きな資金需要がないうちから小さく借りて返済することを重ねることで自信の信用スコアを高め、将来より大きな借り入れを低い利率でできるように準備したいという思惑があります。

これら借り手は平均して8−18%もの利子を支払っていますが、そのような高い利子を支払ってもなお、返済実績を積み重ねることを重要視していることがわかります。

また、ソーシャルレンディングでお金を借りる消費者のうち56%が、過去に銀行等の金融機関で借り入れをした実績がない人たちでした。

前出のクローズアップ現代では、「見栄を張る」ための消費や、デートに着ていく服などの日常的な用途にまでインターネット金融を使う消費者が紹介されていました。ACCAの調査によると、「生活費のために」ソーシャルレンディングを利用する人は全体の20%、「値の張る耐久消費財を購入するため」にソーシャルレンディングを利用する人は全体の9%であるとのことでした。

また、消費者が既存の金融機関ではなくソーシャルレンディングサイトを通じて借り入れする理由としてあげたのは、審査が簡単で便利だからというものでした。

貸し手は20−30代の中間層

引き続きACCAの調査結果から、今度は貸し手の状況を分析します。73%の貸し手が20歳から38歳の間でした。

また、86%が都市戸籍の保有者、過半数が大学以上の学歴を有しています。また、貸し手の月収は3,000元から5,000元(4.5万円〜7.6万円)が46%、5,000元から10,000元(7.6万円〜15万円)が39%となっています。

中国における平均月収が5,000元であることを考えると、収入は平均程度のようにも思えますが、その年齢も加味して考えると低所得者層ではなく、中間層であると考えるのが妥当ではないでしょうか。

貸し手が好む利回りは年率12−18%で、これは中国の銀行預金(4−5%)の3−5倍に当たります。貸し手のソーシャルレンディング利用動機は、資金を増やしたいこととともに、できるだけ資金を分散させたいというものでした。

中国のインターネット金融会社の4割が詐欺事件を起こしたことがある

2015年12月に発覚したEzubao社の架空投資詐欺事件では、約9000億円もの被害が発生し、被害者数は90万人を超えました。国営放送CCTVで同社のCMが放映されていたことから、政府の責任を非難するデモも発生するなど、国中を揺るがす大事件となりました。

このEzubao社にかぎらず、中国インターネット金融会社のうち4割が何らかの詐欺事件を起こしたことがあると報道されており、さらなる規制強化が見込まれています。

前述のとおり、2015年6月に投資家からの預り金を指定金融機関にて保全することを義務付ける通達が出されたほか、投資家からの資金を借り手にパススルーせずに留保しておく「プーリング」の禁止、最低資本金の設定などが定められています。

中国の金融市場は、国営金融機関の寡占により非常に歪んだ形になっており、ソーシャルレンディングにかぎらず、シャドーバンキングや、国営「ゾンビ」企業の不良債権問題、投機的な投資家が多いこと、消費者の金融教育が未熟なことなどから多数の問題を抱えており、今後数十年という時間をかけて正常化していくものと考えられます。

リアル店舗で消費者ローンを提供するCreditEase社のYin社長の分析では、中国のソーシャルレンディングはまだ中国の総融資額の0.25%にしか達しておらず、今後とも非常に大きな伸びしろがあるとしています。悪徳業者が淘汰され、中国のソーシャルレンディング市場が健全に成長してくれることを期待しましょう。