資産運用の手段には、株式投資やFX、投資信託などさまざまな方法がありますが、国債の購入を検討したことがある方も多いのではないでしょうか。
国債の基本的な知識から、国債を購入する方法、メリット・デメリットについて解説します。
国債とは
国債とは、国が発行する債券である「国庫債券」の略称で、国が資金調達する手段の1つです。
投資家は国債を購入することで、国が設定した金利を半年に1回受け取れます。そして満期になると、投資した元本が償還されます。
債券なので、投資家からお金を借りるものです。また、国が債券を発行しているため、国が破綻しない限りは元本割れリスクはないといえます。
なお、債券にも様々な種類があり、企業が資金調達を目的として発行する債券を社債と呼びます。
この国債にもいくつかの種類があり、個人投資家にしか購入できない国債も、個人が購入できない国債もあります。具体的に見ていきましょう。
【社債について詳しく知りたい方はこちら】
国債の種類
国債は利付国債と割引国債の大きく2つに分けられます。
利付国債
利付国債とは、1年に2回(半年に1回)利子の支払いが行われる国債です。
満期が発行時に設定されており、通常は満期時に発行価格と同額の額面金額が支払われるため、満期時まで保有している場合は元本割れしません。(国が破綻しない限り)
割引国債
割引国債は、通常国債のような利子の支払いはありません。利付国債と同様に、満期が発行時に設定されていますが、発行価格は満期までの利子分が額面金額から割り引かれた形となっています。
そのため、満期時に受け取る額面金額は発行金額を上回り、その差額が利益になります。
個人投資家が購入できる利子付国債
個人向け国債
個人向け国債とは、個人投資家しか購入することができない国債です。
機関投資家が購入する他の国債の場合には、通常は満期時まで保有する必要がありますが、個人向け国債の場合には途中解約が認められているなどのメリットがあります。
また、3年・5年・10年と3つの期間設定がありますが、3年と5年は固定金利、10年は変動金利となっており、インフレリスクにも対応できています。
個人向け国債 | |||
---|---|---|---|
満期 | 10年 | 5年 | 3年 |
発行頻度 | 毎月 | ||
購入単位 | 最低1万円から1万円単位 | ||
購入限度額 | 上限なし | ||
販売価格 | 額面金額100円につき100円 | ||
購入対象者 | 個人に限定 | ||
金利種類 | 変動 | 固定 | |
金利設定 | 後述 | ||
下限金利 | 0.05% | ||
中途換金 | 換金可能(発行後1年は不可) | ||
償還金額 | 額面金額100円につき100円 |
※1(2018年3月時点)
【個人向け国債について詳しく知りたい方はこちら】
新窓販国債
新窓販国債も個人投資家が購入できる国債ですが、個人向け国債のように個人に限定されているわけではなく、法人などの名義でも購入できます。
個人向け国債のように途中解約が認められていないものの、市場への売却は可能になっており、売却のタイミングによっては元本割れする可能性があります。
2年・5年・10年満期と3つの期間設定がありますが、全て固定金利となっています。
新窓販国債 | |||
---|---|---|---|
満期 | 10年 | 5年 | 2年 |
発行頻度 | 毎月 | ||
購入単位 | 最低5万円から5万円単位 | ||
購入限度額 | 一申し込みの上限は3億円 | ||
販売価格 | 入札結果に応じて、発行毎に変動 | ||
購入対象者 | 制限なし | ||
金利種類 | 固定 | ||
金利設定 | 直近の入札で発行した国債と同じ | ||
下限金利 | なし | ||
中途換金 | 売却のみ可能(元本割れ有) | ||
償還金額 | 額面金額100円につき100円 |
※1(2018年3月時点)
個人向け国債と新窓販国債を比較すると、個人向け国債のほうが購入単位が小さく、下限金利の設定や換金による元本保証などメリットが多いです。
個人向け復興応援国債と呼ばれる東日本大震災からの復興を応援する個人向け国債の変動10年をベースにした国債も取り扱っていましたが、現在は募集を終了しています。(2018年3月時点)
国債の金利
個人向け国債 | |||
---|---|---|---|
満期 | 10年 | 5年 | 3年 |
金利種類 | 変動 | 固定 | |
金利設定 | 基準金利×0.66 | 基準金利-0.05% | 基準金利-0.03% |
基準金利 | 直近の10年債平均落札利回り | 5年債の想定利回り | 3年債の想定利回り |
※1(2018年3月時点)
個人向け国債の金利は、固定金利と変動金利の大きく2つに分けることができます。
変動金利
変動金利は、半年毎に適用金利が変更されるため、その時々によって受取利子の金額に増減が発生します。
固定金利とは異なり、実勢金利の動きに左右されるため、発行した時点で最終的な投資結果を知ることはできません。
また、実勢金利の動きに左右されるということは、金利が上昇し、受け取れる金額が増えることもあれば、金利が低下し、逆に受け取れる金額が減る可能性もあります。(最低金利よりは下回らない)
固定金利
固定金利は、発行時に設定された利率が満期まで変わりません。実勢金利が下落した場合でも、設定時の金利が適用されます。
実勢金利の変動に利子が左右されないということは、発行した時点で最終的な投資結果がほぼわかるため、安心して購入できます。
しかし、金利が上昇しても発行時の金利が適用されるため、変動金利であればもらえはずの利子がもらえないといったデメリットもあります。
国債のメリット
安全性が高い
国債は発行体が国家であり、国家の信用が高ければ、発行体が破綻するリスクは低く、比較的安全な金融商品といえます。
銀行に預金していても、元本保証が1,000万円とその利息までしか確約されていないことを考えると、元本保証でないとはいえ、、安全性が高いといえるでしょう。
定期預金よりも金利が高い
メガバンクの1つである三井住友銀行の定期預金金利は、期間や金額による差がなく0.01%となっています。※2(2018年3月時点)
個人向け国債の金利は、下限金利でも0.05%となっているため、定期預金よりも高い金利で資産運用できるでしょう。
少額投資ができる
株式投資や不動産投資は、いざ始めようと思っても、ある程度まとまった資金ですが、個人向け国債は最低1万円から1万円単位で購入できるため、大きな資金を必要とせずに、少額投資が可能といえます。
国債のデメリット
すぐに換金できない
銀行の定期預金が1ヵ月や半年など比較的短い期間の設定も可能ですが、個人向け国債は最低1年間は途中解約ができません。
また1年経過以降、解約による換金を行うことができますが、中途換金調整額という形で計算され、経過期間によっては、思ったほど利子が付かないこともあります。
購入できる期間が決まっている
国債は通常毎月発行されますが、いつでも購入できるわけではなく、募集期間内に金融機関等で申し込みを行って購入します。
募集期間も毎月1日から月末までというわけではなく、国債の種類によって異なるため、発行スケジュールを確認する必要があります。
投資信託などと比較すると金利は低い
投資信託と国債は、最初に購入手続きを行った後は保有するだけという特徴がありますが、金利(利回り)という点では投資信託の方が高いといえます。(ただし投資信託ごとで利回りは異なる)
国債の金利よりも高金利(利回り)を期待する場合には、株式投資や投資信託などの国債よりもリスクが高い運用方法を選択したほうが良いでしょう。
国の信用リスク
国が破綻すれば国債の価値は無くなります。ある事業や企業が無くなる、倒産するリスクよりも低いかもしれませんが、そのリスクはゼロではありません。
元本保証があるわけでないので、国債には常に信用リスクがあることを念頭に入れておきましょう。
【国債のその他のリスクについて詳しく知りたい方はこちら】
国債の買い方
国債を購入するためには、国債の募集期間内に金融機関等で申し込みを行う必要があります。具体的な購入の流れについて見ていきましょう。
各金融機関で国債の取り扱いを確認
国債は都市銀行やネット証券などの各金融機関で取り扱っていますが、全ての金融機関で取り扱っているわけではないため、注意が必要です。
通常は、どの金融機関で購入しても金利や手数料は変わりませんが、一部の金融機関では口座管理手数料等が発生する場合があるため、事前に確かめておきましょう。
また、金融機関によっては国債の購入を促すためにキャンペーンを実施しているので、キャンペーン内容の比較を行うと良いでしょう。
口座開設
国債を購入するためには、金融機関の口座を開設する必要があります。
銀行の場合には、銀行の窓口に行き、必要書類の記入や個人情報の提出などの手続きが必要ですが、ネット証券などではネット上で手続きが完結します。
口座開設後の利便性なども考えて、どの金融機関で口座開設を行うか検討しましょう。
購入の申し込み
口座開設が完了した後は、国債を購入するための申し込みを行います。
国債を購入するためには、窓口で購入代金、印鑑、本人確認書類などの提出が求められますが、こちらもネット証券などではネット上で購入手続きを完結できます。
購入後は原則キャンセルができないため、注意しましょう。
国債を購入する際のポイント
なるべく満期まで保有する
個人向け国債は、発行から1年が経過した段階で途中解約が可能になりますが、直前2回分の各利子相当額×0.79685が差し引かれてしまうため、ほとんど利子がつかないといえます。(元本部分は保証されます)
差し引かれる利子の割合も大きいので、緊急時を除いて、国債は満期まで保有しておいたほうがよいでしょう。
目的に応じて固定金利、変動金利を選ぶ
国債を購入する場合は、満期後にどのような目的に使用するものなのかを事前によく検討してから金利を選択する必要があります。
固定金利であれば、将来受け取れる金額を正確に把握しやすいため、満期後の計画も立てやすいでしょう。変動金利は将来の受け取り金額が変動する可能性があるため、細かな計画まで立てづらいかもしれません。
将来達成したい目的が現時点で明確に固まっているなら固定金利、まだそこまで固まっていないのであれば変動金利も検討するとよいでしょう。
【個人向け国債のキャンペーンはこちら】
まとめ
国債といっても、いくつかの種類があり、その金利にも違いがあります。また日本では近年低金利状況が続いているため、国債は定期預金よりも金利が高いですが、すぐに換金できなかったり、好きなタイミングで購入できないなどのデメリットがあることを理解しておきましょう。
国が破綻しないとは限らず、国債にも元本割れリスクがあることを忘れずに、購入を検討しましょう。
※1:国債窓口
※2:三井住友銀行 円預金金利